船木俊介「デジタル進化論」

スーパーソフトウエア東京オフィス代表&キッズラインCTO

イシューからはじめよ

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バリューのある仕事をするには、解の質を高める必要がある。そのために、イシュー度、つまり課題の質を問わねばならない。

何年か前に読んだ、「イシューからはじめよ(ヤフーCOO室室長 安宅和人)」という本がオフィスの本棚にあって、結構いい本だったよなと思いながら久しぶりに読んでみた。問題提起はストレートに、生産性を上げるとはどういうことか、について。まとめると冒頭の一文になる。

簡単に言えば、生産性の高い人は解決すべき課題を見極める能力が高い。仕事ができない人は、成果に関係のない無駄な努力が多い。その「見極め」に差がある、ということ。

そもそもハイレベルな仕事というのは不確実性の固まりなので、決まった手順があって、その通り行えば目的が達成されるという種類のものではない。結果を出すには幾通りものアプローチがあり、いくら真面目に取り組んでもダメな経路もあり、ムダと気づかずムダを重ねる人もいる。つまりスタンスの問題ではなく、思考力が問われる。

例えば、Googleはウェブにある目的の情報をユーザがいかに入手するべきかという解から始まった会社だ。その背景にはもちろん、当時のディレクトリ型では賄いきれないほど情報が増え、闇雲にキャッシュしたなかから特定の語句を含むページを表示する原始的検索では目的文書にたどり着くことが難しいことがあった。

この本に沿って言えば、ユーザの検索コストというイシューに対して、ドキュメントの有用性評価を行うページランクという解によってバリューを出している、ということになる。こてこてとデザインで飾り付けたり、余計な情報を付加したり、といったショボくてムダな努力はしない。

カレーを作るときに、どんなに料理が下手な人でも、とにかく水の量に気をつけていればなんとかなる。野菜の切り方など、それ以外の細かい努力をいくらやっても大して変わらないが、水の量を間違うととんでもないことになり、正しければ美味しいカレーができる。つまりは、それと同じことだ。

イシューとは、
① 2つ以上の集団の間で決着の付いてない問題
② 根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題
今の段階で答えを出すべき問題であり、かつ答えを出せる問題(=イシュー)は、我々が問題だと思う対象全体の1%ほどに過ぎない
「これは何に答えを出すためのものなのか」というイシューを明確にしてから問題に取り組まなければ後で必ず混乱が発生し、目的意識がブレて多くのムダが発生する。



個人的には、この巻末コラムが好きだった。どんな分野でも、プロフェッショナルとなるくらいのレベルは、こういう意識で取り組むべきだと思う。これが言いきれない人は何歳であろうが、まだまだ先は長い。

「コンプリート・スタッフ・ワーク(Complete Staff Work)」これは「自分がスタッフとして受けた仕事を完遂せよ。いかなるときにも」という意味だ。この「コンプリートワーク」という言葉はプロフェッショナルとして仕事をする際には、常に激しく自分にのしかかってくる。プロフェッショナルの世界では「努力」は一切評価されない。
「人から褒められること」ではなく、「生み出した結果」そのものが自分を支え、励ましてくれる。生み出したものの結果によって確かに変化が起き、喜んでくれる人がいることがいちばんの報酬になる。



戦略コンサルタント寄りの書籍だけど、エンジニアでも、プログラミングを学んだ後に、身につけた素晴らしい技術を使ってクライアントの問題を解決する、何かを生み出して社会を変える、ここで役に立つ内容なので読んでみて欲しい。