船木俊介「デジタル進化論」

スーパーソフトウエア東京オフィス代表&キッズラインCTO

幸福論について

アランの「幸福論」をさらっと読んでいて、情念と意志という精神状態の分類には感銘を受けた。もともと自己啓発的なものは受け付けないのでタイトルからしてどうかなあ?と思ったんだけど、思索的な意味で面白い本だった。

僕はあまり自分が不幸だと思ったことはないけれど、例えば、腕や足の一本くらい事故でいつでも無くなる可能性はある。もし、そうなったときに不幸かどうか。

そういうことを考えることがある。

いまの状態から何かが欠けたとしても、それ以外の大部分の「自分」であることには変わりなく、それは他人に対しても同じ。ワンちゃんに対しても同じ。なので、別にそんなことくらいという感覚だった。

アランは、人は誰でも幸福になるという「意志」を持っているんだけど、自分は劣っているだとか、人と比較してとか、世を羨んだりとか、やることが上手くいかない、思った通りにいかないとか、そういう「情念」によって自らの心の内から不幸という状態を作り出すことで、不幸になる、という。

さらに、人間というのは弱いものなので、その情念に簡単に負ける。いくら強い意志を持っているつもりでも、考えることで自ら不幸状態を作り出す。意志はいつの間にか消える。

こういう話。

「悲観主義は気分に属し、楽観主義は意志に属する」

というように、誰でも考えすぎることで情念に負けて、動かされ、不幸な状態を作り、その不幸を伝染する可能性があるわけだ。

おもしろいのは、最大の原因は「ひま」にある、と言っていること。

「ひま」というのは、あることないことを様々考える時間があるので、疑心暗鬼になり、不安になり、アランのいう情念に支配された行動を行い、不幸を他者にまで拡げる。

単純すぎる話だけど、改めて言われると、なるほど。


情念や意志という存在を認識できるかどうか、その上で行動を意志に立脚させる、というのが自分で自分をコントロールできる優れた理性だし、なにより幸福のほうがいいよね。


人間の精神状態というのは理解不能なくらいの無限のポジションがあってもいいはずなのに、わりとシンプルなことで解釈できるのが興味深かった。

哲学の専門家からすれば、いや、あれはね、とかいろいろあるかもしれないけど。


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